策謀 ― 堂場瞬一 ― ネタバレなしの読後感想
堂場瞬一のひとつの十八番、警察推理小説です。殺人と放火、別々の事件を再捜査する二人の刑事が主人公です。
顔をあわせれば互いに揶揄しあう仲であり、本人たちは馬が合わないと思っているにもかかわらず、周りからは名コンビと思われる不思議な関係が、物語の味付けになっている。「どちらかと言えば嫌いなやつ♪」という、JTのCMで流れていたキヨサク(MONGOL800/UKULELE GYPSY)さんの歌詞を、ふと思い出してしまうような関係です。
足を使って捜査をするタイプと、調査資料を紐解いていくタイプとが融合して事件を解決していく展開は、まさに推理小説の醍醐味といえるでしょう。ホームズとワトソン、ポワロとヘイスティングスの様にとはいかず、思わず相手をけなしてしまうが、クタクタになって捜査をやり遂げる、ちょっと泥臭い日本の刑事の活躍を楽しんでください。
周りを固める登場人物も、表情が見えるくらいに豊かに描かれており、俳優だったら誰がはまるかな? などと考えてしまうほどです。
小説には、終わらせ方が色々ありますが、この小説の終わらせ方にはとても好感が持てます。事件の解決だけではなく、途中にちりばめられたいくつかの疑問も解かれ、事件の裏にある心をも明かしてくれる丁寧さがあります。
お勧めの一冊です。

カバー装画 茂本ヒデキチ
五年前、渋谷で殺人を犯し国際手配されていた船田徹が突如帰国するとの情報が、追跡捜査係の西川大和の許に入った。逮捕されると分かりながら、なぜ船田は帰国するのか? 無事逮捕できたものの、黙秘を続ける船田の態度に西川は不審を抱くのだった ―。
一方、五年前のビル放火事件の洗い直しを続ける沖田大輝は、犯行の動機に疑問を感じていた。細かい手掛かりを求め奔走する沖田。やがて、それぞれの事件は、時を経て再び動き始める ―。
書下ろし長篇警察小説。(ハルキ文庫 カバー裏表紙から)
<作家紹介>
1963年茨城県生まれ。青山学院大学国際政治経済学部卒業。新聞社勤務のかたわら小説を執筆し、2000年『8年』で第13回小説すばる新人賞を受賞。主な著書に「刑事・鳴沢了」シリーズ、「警視庁失踪課・高城賢吾」シリーズ(中央公論社)、『ヒート』(実業之日本社)、『八月からの手紙』(講談社)、『異境』(小学館)、「アナザーフェイス」シリーズ(文藝春秋)などがある。(ハルキ文庫)




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